イタリアなう
血に染まったイタリアの盛夏を生きる
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またしてもの大量虐殺に徹せざるをえない盛夏の日々です。あまりの数に、我が手は血に染まったがごときの臭いさえしてきます。なにゆえ、毎年、こんな惨いキーラと化さなければならないのか。イタリアの田舎暮らしを呪いたくなります。
北伊ロンバルディア地方の自然公園指定域に住む私。ナチュラルな環境下にあるのは好ましいものの、それなりの税金も多数課されています。「川の清流保守税」なんぞというのだってあるんですよ。あれこれ、トータルすると、月々の支払、けっこうな額。庶民の身には厳しいものとなっています。
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加えて、夏には、ハエや蚊がウヨウヨ、ワンサ。室内外を自由に行き来するマルのために、ドアや窓の一部をオープンしっぱなしにしているのも禍。好き勝手に入ってくるハエ、そして蚊たちをどうするか? 防虫スプレー? ダメ、ダメ! 効果なし。むしろ、ハエたちの精力剤(?)としかなりません。
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対応、対策はただひとつ。そうです! 殺すしかありません。蚊は、まだいいのです。刺されにくい体質だから。でも、ハエは我慢なりません。ことにキッチンにより押し寄せてくるので不衛生きわまりなし。ビシバシ、やります。殺害しまくる。最後の一匹まで許さない覚悟で執念を絶やしません。
でも、日々、何十、何百匹と叩き殺していると、さすが罪悪感が生じたりもします。いいんだろうか、こんなことをしていて……と。
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そういえば、イタリア暮らしを始めた年の夏。フィレンツェ郊外の修道院の一室に、こんな貼り紙があったことを想い出しました。――ハエを殺さないでください。ハエにも命があるのです。
驚きましたね、心底。「カトリックの偽善だ」と憎まれぐち呟いた私でした。
あの修道院のシスターたちは、今でもハエと「共存」しているのでしょうか。久しぶりに、フィレンツェ郊外の光景が浮かんできたものです。
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タカコ・半沢・メロジー